2016年 03月 12日
野村正三郎
「隣の坊や」 カシュー漆画・板 F3号
制作年:1985年頃
野村正三郎(のむら・しょうざぶろう)1904−1991年
長野県・佐久生れ、1928年東京高等師範学校卒業、中学高校の教員を経て1953年愛媛大学教授、1965年二科会会友推挙、1969年愛媛大学名誉教授、1971年二科会会員推挙、1974年勲三等旭日章受章、1980年銀座・文藝春秋画廊個展、1986年愛媛県立美術館個展、銀座・フタバ画廊個展、1997年フタバ画廊遺作展、2004年佐久市立近代美術館で生誕100年記念遺作展。
油彩と異なる技法に苦労はあったようだが、カシュー漆を絵画に応用しようとした試みは見事に成功する。
カシュー漆の特徴は滑らかでありながら堅牢さを持ち合わせている。
キャンバスに代わる合板とマッチし油彩に勝るとも劣らない重量感をかもしだす。
この技法のパイオニアたる野村はカシュー漆画と名付け精力的に活動を続け後進の育成にも努めた。
何よりも油彩に比べ安価であったことが教育者としての野村の心を揺さぶったのであろう。
後進たちに思う存分、筆をふる機会を与えたかったに違いない。
作品は隣家の少年を描いたもので中間色を多用し愛らしさと優しさを巧みに表現した。
この優しさは多分に野村が育った環境に他ならない。
野村は「四季の変化に伴う色の変化。欅の紅葉の変化。雑草の生長の姿。静かに流れる小川と枯れ草が氷付く冬の土手。黒くくねった桑の幹と冷びやと積もった雪。どんよりと曇った冬の夕刻、遠近の山の色等々は皆微妙で言葉に表しにくい色彩の世界であった。かかる自然の動きは弥が上にも自分の感性を駆り立て絵の世界へと塡め込んだと思われる。」と語っている。
そして主な作品82点が故郷の佐久市立近代美術館に収蔵された。
*カシューとは主原料のカシューナッツ(食用)の実の殻から抽出した成分の合成樹脂塗料である。光沢があり高樹脂分のためふっくらとした肉持ち感がある。漆かぶれはなく色数と種類も豊富である。
(所蔵参考資料)
野村正三郎作品集(1988年)
生誕100年・野村正三郎展(佐久市立近代美術館)
<他の作品>
「ふたり」 カシュー漆画・板 64.5×22㎝
制作年:1986年
2004年 生誕100年記念「野村正三郎展」のリーフレット